街1 ■親しかった友人が住んでいた街が、僕にとって結構お気に入りだった。会社が東京駅にある時は気軽に遊びに行けたが、汐留方面に会社が移ってからは遥か遠くに感じていた。そこで時間があったので車で出かけてみた。横浜から約40キロ。気軽に行く箱根や熱海の約半分の距離だ。その街は東京駅から20数分で電車で行ける意外と便利な街だった。よく友人の家のベランダでギネスを飲みながらボーッと空を見ていると、羽田、成田に向かう、両空港に行き来する飛行機が途切れる事無く飛んでいて、乗り物好きの僕にとっては飽きが来なく、このまま空を見つめていれば、絶対にUFOが見られると思ったものだ。■この街は新しい街だ。綺麗に計算されて区画整理がされていて、街全体が芝生や緑でデザインされている。道路も拡く車好きの僕にとっては、とってもComfortableな街だ。また、港北ニュータウンと並んで、団塊ジュニアが住む街としても有名なエリアで、駅前のCafeでコーヒーを飲んでいると、30代中間の夫婦が小さい子供連れで歩いているのを頻繁に見受ける。一見、幸せそうに見える。そして、この街には、小学校〜大学、日帰り温泉施設、海浜公園、と住民が楽しめる環境が整っている。僕のこの街の印象は、ゆっくりと時間が流れて、住民が生活を楽しんでいる様な感じが好きだった。けれども、まだ醸成地は沢山あり、現実にマンションもどんどん建設されている。こんな環境の良い、東京から近い便利なエリアを大手デベロッパーが見逃しておく訳が無い。醸成地には草が生い茂り、それが緑の多い地域を更に演出している。今のこの街の状況がベストの様な感じがした。居心地が良いのである。■そんな事を考えながら、マンションが立ち並んで、他の何処のエリアでも見られる様なマンション林の街にならなきゃ良いなぁ〜!色褪せるのは嫌だ。僕の好きな街でいてくれ!と、思った時に、晴れていた空が俄にかき曇り、雷の音がしだした。そしてワイパーが千切れるんじゃないかと思うほどの大雨が降ってきた。まるで街が僕に「出て行け!お前なんかにもう関係ない!余計な心配は無用だ!立ち去れ!」と排除をしているが如くに感じた。なんか孤独感からか、とっても寂しい感じがした。 僕は悔しいので、普段は絶対にしない事をした。タバコを吸って、道路に捨てて踏んだ。このタバコのフィルター繊維は少なくとも向こう10年は分解されずに残るだろう。街へのマーキングのつもりだった。僕はその街を後にした。そして、大雨の中を都内に向かう高速道路に入った。街に後髪を引かれたのか?雨が余りにも激しいからか?ゆっくりと高速を流した。東京に入る大きな河を越えた時、突然、あの激しい雨がやんだ。東京方面を見ると雲間から日差しが差し込んできた。その時、「そういう事か。良く分かった!」実際には独りよがりで、街には相手にされていないのだ。無視されたのだ。虚脱感と虚無感の中で、明確に、街に、排除された事を感じた。と、同時に自分の中で何かが終わった。街なんて他にも一杯ある。僕を受け入れてくれる周りにある新しい街を大事にすれば良いのだ。と、悟った。あの街には二度と行かないだろう。僕は、アクセルを思い切り踏み込んで、かったるい走りをしているサンデードライバーを蹴散らして走った。 ■街 街2街4街8街9